ブルーベイビー症候群の原因であった硝酸態窒素は、人体に有用な働きを持つ
ブルーベイビー症候群をご存知だろうか?1956年のアメリカで、赤ん坊に裏ごししたホウレンソウを離乳食として与えたところ、赤ん坊の顔が真っ青になり、30分もしないうちに死亡に至った事件である。計278人の赤ん坊がこの中毒にかかり、その内39名が死亡した大惨事である。WHOによれば、第二次世界大戦後から1986年までに約2000件の中毒事故があり、160人の乳幼児が死亡している(参考URL、硝酸塩の危険性、http://www.lohas-design.jp/sand/cat10/post-2.html)。
当時、ブルベイビー症候群を引き起こしたのは、硝酸態窒素が原因であると考えられていた。硝酸態窒素が体内で亜硝酸に還元され、亜硝酸が血液中のヘモグロビンと結びつくことで酸素を運ぶ能力が低下し、酸欠によって死亡したというものである。また、硝酸態窒素が持つ別のリスクとして、発がん性をも指南されていた。
この硝酸態窒素は、普段食べている野菜に含まれており、EUなどでは上限値が設定され、それ以上の値にならないように規制されている。
では、この恐ろしい硝酸態窒素は本当に危険なのだろうか?50余年が経ち研究が進んだ現在、硝酸態窒素が原因であるとは言えないことが、1996年にフランスで発表された書物によって明らかにされている。『硝酸塩はほんとうに危険か』では、以下のように主張されている。
・乳児のブルーベビー症候群は、細菌の多く含まれた地下水が原因であって、硝酸態窒素そのものよりも地下水の衛生に気をつけるべきである。
・調理や加工から時間がたって細菌の増えた状態になると硝酸還元菌も増え、亜硝酸が増えることにより危険が増すのだという。発がん性についても多くの研究があるが、その因果関係は認められてはいないというものである。
(参考ブログ:作物体中の硝酸態窒素を減らすために何が必要か、岡本信一。http://agri-biz.jp/item/detail/7623?page=1)
さらに、硝酸態窒素は有害どころか、むしろ硝酸態窒素は有用な効果があることが分かってきている。『土と施肥の新知識』では、以下のように記されている。
・硝酸カリウムは、かつてはむくみに効く利尿剤であった。また上流階級の女性にはビール代わりの飲料だった
・3ヶ月未満の乳幼児の死亡原因は、最近汚染による多量の亜硝酸塩の生成や腐敗菌そのものの影響が主である
・1998年のノーベル賞を受けたイナグロ氏らの研究で、硝酸塩はヒトの重要な代謝産物の一つであり、体内で恒常的に生成されていることが明らかになった
・国立衛星試験所の前川明彦氏らの実験(1982)によると、硝酸・亜硝酸摂取はがんを抑制し、ラットの寿命を長くしていた
・体液に入った硝酸塩は、口中バクテリアの作用により亜硝酸塩になる。亜硝酸塩は、虫歯予防に役立つ、ストレスで緊張した胃をほぐす、ピロリ菌などを死滅させるなど、さまざまなはたらきがある
(参考文献、土と施肥の新知識、おいしいものは体にいい)
では、硝酸態窒素は多く含まれてても良いのか?それは否である。上記の岡本さんのブログに書かれているが、 作物体中の硝酸態窒素が高いと作物の糖度は上がらないという反比例の関係がある。さらに、糖度が上がらないと栄養価が下がるなど負の影響がある。加えて、『おいしいものは体にいい』の中でも、硝酸態窒素が多すぎると食味が落ちることを指南されており、作物毎の適正値の硝酸態窒素があることが分かっている。
まとめると、
・硝酸態窒素は危ないと言うのは誤解だった
・硝酸態窒素はむしろ有用な効果を持っている
・硝酸態窒素が多いのは良くない。栄養価、食味の面から、各作物毎の適正値の範囲に収めるべきである
農業界には硝酸態窒素は危険だと言う人が多いけど、全くのウソじゃん!とたけぴょんは思ってます。
参考文献
硝酸塩は本当に危険か―崩れた有害仮説と真実 (自然と科学技術シリーズ)
- 作者: J.リロンデル,J.‐L.リロンデル,J. L’hirondel,J.‐L. L’hirondel,越野正義
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログを見る