たけぴょん日記

某理系大学院卒、自然栽培農家見習い。

TPP、外国産の黒舟に負けないために!

TPPを皮切りに、日本の農業が崩壊するということが報道されています。友人から農業ってどうなるの?とよく聞かれる訳ですが、そもそも、農業と呼ぶのは工業と言っているのと同じで、あまりに範囲が広すぎます。TPPによって日本の農業の全てが消失する訳ではありません。正確には”ある特定の農作物、畜産物のシェアが奪われる”ということです(実際には、関税撤廃の問題だけでなく、知財の問題も絡んできます)。

 

本エントリでは、TPPによって入ってくる安い外国産に対抗する方策、を考えてみたいと思います。

 

先ず、現状の日本の農業のおさらいをしたいと思います。耕作放棄地は昭和50年代と比べ約4倍に増え(約40万ha、東京ドーム85,000個分)、基幹的農業従事者数は昭和60年代に比べ2分の1に減少しています(約178万人)。ここまで衰退したのは、単純に農家の生活が経済的に成り立たっていないからです。そのため、10兆円の農産物の産業に対して、約半分の5兆円で保護しています。この補助金の割合は、他国と比較しても高く、OECDのレポートでは他国平均の3倍の補助金が使われていると指南されています。

 

この状況を見れば分かるように、TPP以前に、そもそも日本は国内での戦いで負けているとも言える状況です。

 

だけど、たけぴょんの問題意識は、農業政策、補助金の是非ではなく、そもそも”農作物の良さを伝えて売る”、という当たり前のことが出来ていないのではないかということです。農作物の美味しさとは、人、食事をするロケーションや味付けで変わるなど、とても曖昧なものです。それ故に、食べる前に農作物がどう作られているかという背景情報はとても重要です。

 

しかしながら、直接美味しさに関わる品種、旬、栽培方法などを意識して買っている消費者はどれくらいいるでしょうか。残念ながら、意識している消費者はごく少数であり、多くの消費者は”価格のみ”が購買要因となっています。そこに価格の安い外国産が入ってきたら、負けるのは火を見るより明らかなことです。

 

また、ちきりんさんも2005年度のブログで同様に指南していますが、農産物の良さを訴求した大々的な広告を、テレビや電車で見たことがあるでしょうか。多くの農家は作るのが専門であり、売るのは苦手です。それならば、農家をサポートする農協が、旬の時期に合わせて様々なチャネルで広告を打つべきではないでしょうか。さらに言えば、農家の人も積極的にソーシャルメディアを使って、情報発信をしていくべきでです。彼らがこだわっている事を、1つのストーリーにして動画で配信するのも良いアイディアです。実は、消費者が知らないけれど、すごく面白い情報が農場にはまだまだたくさん落ちています。

 

例えば、最近知ったのは種のお話。日本では、F1種という異なる性質のタネを人工的に掛け合わせて作った雑種が、流通のほとんどを占めています。それは野菜の流通や販売の都合上、同じ大きさ、同じ味を作るよう生産側へ求められてきたからです。そのため、それに適さない野菜は淘汰されてしまいました。

 

一方、在来種と言われる種を使って栽培している農家さんがいます。この在来種がさきほど述べた流通、販売上において不都合な種です。F1種と違って同じ大きさにはなりませんが、野菜本来が持つ味を持っています。種も自家採取できるため、種が土地に馴染じみさらに美味しさを増します。

 

こういった話って、一般の人は知らないけ面れど面白くないでしょうか?たけぴょんは在来種で有名な野口さんの「タネが危ない」を読んで知りました。消費者が知らない作物の面白裏情報って山ほどあるわけで、こういった情報を地道に消費者に向けて情報発信することで、購買要因が変わっていくわけです。ネットだけでなく、消費者を畑や田んぼに呼び込み直接伝える方法だってあります。

 

先ずはTPPに嘆く前に、ビジネスとして当たり前のマーケティング、モノの良さを消費者に分かってもらうことから始めるべきです。いくらコールドチェーンが発達しても、外国産の農作物は国内の農産物に対して鮮度では勝てません。農作物の情報伝達だって有利ですよね。実際に、有名な農家さんはそういったことをきちんとやっていますけどね。消費者の食の関心なくして、日本の農業の未来はありません。

 

野口種苗研究所代表、有名な在来種種苗会社。在来種について知るにはベストな本。